近年、B2B企業の営業活動は「勘と経験」から「データと仕組み」へと軸足を移しつつあると言われています。インサイドセールスやセールスイネーブルメントといった組織の考え方、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)やGTM戦略(Go To Market戦略)といった戦略の考え方、さらにSFAやMA(マーケティングオートメーション)、インテントデータといったツール・データの用語が、日々の会議や提案資料に当たり前のように登場するようになりました。
一方で、これらの用語は英語由来のものや略語が多く、部門や担当者によって理解にばらつきが生じやすいことも事実です。「聞いたことはあるが、正確に説明できない」「隣の部門と同じ言葉を使っているのに、指している内容が違う」といった状況は、営業とマーケティングの連携を妨げる要因になり得ます。
本記事では、B2B営業に携わるご担当者の方が押さえておきたい基本用語を「営業組織・プロセス」「顧客・リード」「市場・戦略」「営業ツール・データ」の4つの領域に分けて解説します。各用語については、弊社ブログの関連記事もあわせてご紹介します。
B2B営業の基本と用語整理の意義
B2B営業とは、法人企業を顧客として製品やサービスを販売する営業活動を指します。個人消費者を対象とするB2C営業と比較すると、意思決定に複数の関係者が関与し、検討期間が長く、取引金額が大きいという特徴があると言われています。B2B営業の基本的な考え方や、B2C営業との違いについては、B2B営業の成功に不可欠な2つの要素を解説した記事で詳しく取り上げています。
こうした特性を持つB2B営業では、営業担当者だけでなく、マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセス、情報システムといった複数の部門が連携して顧客に向き合うことが一般的です。関係者が増えるほど、共通言語としての「用語」の重要性は高まります。用語の理解をそろえることは、以下のような効果に繋がると考えられます。
- 部門間コミュニケーションの円滑化
「リード」「商談」「アカウント」といった言葉の定義が部門ごとに異なると、引き継ぎや数値報告の場面で認識のずれが生じます。定義を共有することで、営業とマーケティングの間の手戻りを減らすことが可能です。
- KPI設計と評価の精度向上
用語の定義は、そのまま数値の定義に直結します。何をもって「有効リード」とするかが曖昧なままでは、施策の効果測定も曖昧になります。用語を整理することは、データドリブンな営業管理の前提条件と言えます。
- ツール導入・データ整備の土台づくり
SFAやCRMなどのツールでは、項目名や管理単位を用語に基づいて設計します。用語が整理されていれば、ツールの設計や外部データとの連携もスムーズに進めることができます。B2B営業が抱える代表的な課題と対処のためのツールについては、B2B営業の代表的な5つの課題を整理した記事もご参照ください。
営業組織・プロセスに関する用語
まず、営業組織の役割分担や、営業活動の進め方に関わる用語を整理します。近年の営業組織は「分業」と「仕組み化」の考え方を取り入れることで、属人性を下げる方向に進んでいると言われています。
- インサイドセールス
電話やメール、Web会議などの非対面チャネルを中心に、見込み顧客との関係構築や商談機会の創出を担う営業機能です。マーケティングが獲得したリードを育成し、確度の高い状態で商談担当へ引き渡す役割を持ちます。定義や役割の全体像については、インサイドセールスの役割と戦略を解説した記事で詳しく解説しています。
- フィールドセールス
訪問や対面商談を中心に、提案・クロージングを担う営業機能です。インサイドセールスとの分業体制では、フィールドセールスは受注確度の高い案件に集中できるようになります。両者の違いと連携のポイントは、インサイドセールスとフィールドセールスの違いを整理した記事にまとめています。
- テレアポ
電話によってアポイントの獲得を目指す活動を指します。インサイドセールスと混同されることがありますが、テレアポが「アポイント獲得」という単一の成果を目的とするのに対し、インサイドセールスは顧客理解や関係構築を含むより広い役割を担います。この違いは、インサイドセールスとテレアポの違いを解説した記事で整理しています。
- セールスイネーブルメント
営業組織が継続的に成果を出せるよう、教育・コンテンツ・ツール・データを統合的に整備する取り組みを指します。個人のスキルに依存せず、組織として営業力を高める考え方として注目されています。背景や成功事例については、セールスイネーブルメントの意味と注目される背景を解説した記事をご参照ください。
- KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)
最終目標(KGI)に至る過程で進捗を測るための中間指標です。営業では架電数、商談化率、受注率などが用いられます。インサイドセールスにおけるKPIの項目や設定方法については、インサイドセールスで見直すべきKPIを解説した記事が参考になります。
- 営業DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル技術とデータを活用して、営業プロセスや組織のあり方そのものを変革する取り組みです。単なるツール導入にとどまらず、業務の可視化と意思決定の高度化を目的とします。効果や成功のポイントは、営業DXの5つの効果と重要性を解説した記事で詳しく取り上げています。
顧客・リードに関する用語
次に、営業対象となる顧客やリードの状態を表す用語を整理します。顧客の状態を正しく分類することは、アプローチの優先順位を決めるうえで欠かせない観点と言えます。
- リード(見込み顧客)
自社の製品やサービスに何らかの接点を持ち、将来的に顧客となる可能性のある企業や担当者を指します。展示会での名刺交換、資料請求、セミナー参加などがリード獲得の代表的な経路です。見込み顧客の基本と効果的なアプローチについては、見込み顧客の定義とアプローチ方法を解説した記事をご参照ください。
- 潜在顧客・顕在顧客
顕在顧客とは自らの課題を認識し、解決策を探している顧客を指し、潜在顧客とは課題を明確に認識していないものの将来的にニーズが顕在化し得る顧客を指します。短期的な成果は顕在顧客から得やすい一方、中長期の成長には潜在顧客へのアプローチが重要とされています。両者の違いは、潜在顧客と顕在顧客の違いを解説した記事で整理しています。
- 休眠顧客
過去に取引や接点があったものの、一定期間コンタクトが途絶えている顧客を指します。すでに自社を認知しているため、新規顧客よりも再アプローチの効率が高いと言われています。掘り起こしの具体的な観点は、休眠顧客を掘り起こす6つのポイントを解説した記事にまとめています。
- リードマネジメント(リード管理)
獲得したリードを分類・育成し、営業に引き渡すまでの一連のプロセスを管理することを指します。リードの獲得(ジェネレーション)、育成(ナーチャリング)、選別(クオリフィケーション)の3段階で整理されることが一般的です。部門間のデータ連携の観点からは、リードマネジメントと部署間のデータ連携を解説した記事が参考になります。
- BANT(Budget / Authority / Needs / Timeline)
商談の確度を評価する際の代表的なフレームワークで、予算・決裁権・必要性・導入時期の4要素を確認します。リードの選別や商談の優先順位付けの共通基準として広く用いられています。
- バイヤージャーニー
購買側の視点で、課題認識から情報収集、比較検討、意思決定に至るまでの過程を整理したものです。企業側の視点で描く「カスタマージャーニー」との違いを理解することで、各段階に適したコンテンツや接触方法を設計できます。詳細は、バイヤージャーニーとカスタマージャーニーの違いを解説した記事をご参照ください。
- バイヤーイネーブルメント
購買担当者が社内の意思決定を進めやすくなるよう、必要な情報や資料を売り手側が提供する考え方です。購買側が自ら情報収集を行うことが当たり前になった環境において、企業と顧客の双方にメリットをもたらすアプローチとされています。バイヤーイネーブルメントの考え方を解説した記事で詳しく取り上げています。
- ダークファネル
購買検討プロセスのうち、Webサイトの計測ツールやMAでは捕捉できない領域を指します。口コミ、レビューサイト、コミュニティでの情報収集などが該当し、B2Bマーケティングにおける新たな課題として認識されています。概要は、ダークファネルの課題を解説した記事にまとめています。
市場・戦略に関する用語
続いて、「どの市場の、どの企業に、どのようにアプローチするか」を決める際に用いられる戦略用語を整理します。これらの用語は営業部門だけでなく、マーケティングや経営企画との共通言語として機能します。
- GTM戦略(Go To Market戦略)
新しい製品やサービスを市場に投入する際に、ターゲット市場、価値提案、販売チャネル、価格などを体系的に定める戦略を指します。営業とマーケティングが協業して策定することが一般的です。基本的な考え方はGTM戦略の基本とチェックリストを紹介した記事で、データを活用した策定方法はデータドリブンなGTM戦略策定を解説した記事で解説しています。
- TAM(Total Addressable Market)/SAM/SOM
TAMは自社の製品やサービスが獲得し得る市場全体の規模、SAM(Serviceable Available Market)はそのうち自社の事業領域で対応可能な範囲、SOM(Serviceable Obtainable Market)は現実的に獲得可能な範囲を指します。営業リソースの配分や目標設定の根拠として用いられます。TAMの考え方については、データドリブンな営業戦略策定に欠かせないTAMを解説した記事をご参照ください。
- ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)
自社に大きな利益をもたらす可能性の高い企業(アカウント)を特定し、ターゲットを絞り込んで営業とマーケティングが一体となってアプローチする手法です。個人単位ではなく企業単位で顧客をとらえる点が特徴です。導入の流れや戦略については、ABMの導入の流れと戦略を解説した記事で詳しく取り上げています。
- ABX(アカウント・ベースド・エクスペリエンス)
ABMの考え方を顧客体験全体に拡張し、獲得後の顧客対応やカスタマーサクセスまで含めて一貫した体験を提供する概念です。ABMの発展形として位置づけられることが多く、ABXの概要を解説した記事で詳しく紹介しています。
- STP分析(Segmentation / Targeting / Positioning)
市場を細分化(セグメンテーション)し、狙う市場を選び(ターゲティング)、その市場での自社の立ち位置を定める(ポジショニング)という戦略立案のフレームワークです。GTM戦略やABMの前提となる分析として位置づけられます。
- 営業リスト(ターゲットリスト)
アプローチ対象となる企業や担当者の情報を一覧化したものです。リストの精度が営業効率を大きく左右するため、事前準備とターゲティングの設計が重要とされています。作り方の基本は営業リストの作り方と注意点を解説した記事で、成果に繋がるリストアップの手順は成果が出る営業リストの作り方を解説した記事で解説しています。
- 業種コード(日本標準産業分類)
企業の事業内容を体系的に分類するためのコードで、総務省が定める「日本標準産業分類」が代表的です。営業リストの絞り込みや市場規模の推定において、ターゲットを定義する共通の物差しとして活用されます。
営業ツール・データに関する用語
最後に、営業活動を支えるツールと、そこで扱うデータに関する用語を整理します。ツールの名称は広く知られている一方で、それぞれの役割の違いや、データ整備の重要性については理解が十分でないケースも見られます。
- SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)
案件、商談履歴、活動記録などを管理し、営業プロセスの可視化と効率化を支援するシステムです。営業担当者の活動を組織の資産として蓄積することを目的とします。基本機能や定着のポイントは、SFAの基本機能と導入方法を解説した記事をご参照ください。
- CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)
顧客情報を一元的に管理し、顧客との関係を長期的に維持・発展させるための考え方およびシステムを指します。SFAが「商談」を中心に管理するのに対し、CRMは「顧客」を中心に管理する点に違いがあります。概要はCRMのメリットと導入手順を解説した記事で、SFAとの違いはCRMとSFAの違いを比較した記事で解説しています。
- MA(マーケティングオートメーション)
リードの獲得から育成、スコアリングまでのマーケティング活動を自動化・効率化するツールです。メール配信やWeb行動の追跡を通じて、リードの関心度を把握し、営業へ引き渡すタイミングを判断する材料を提供します。詳細は、MAの基本機能と定着のポイントを解説した記事にまとめています。
- 名寄せ
複数のデータベースや部門に散在する同一企業・同一人物のデータを特定し、1つに統合する作業を指します。表記ゆれや重複を放置すると、営業の重複アプローチや分析結果の歪みに繋がるため、データ活用の前提となる工程です。必要な理由や進め方は、名寄せの定義と顧客データを整備する方法を解説した記事で詳しく解説しています。
- データクレンジング
誤り、欠損、表記ゆれ、古い情報などを修正・削除し、データを利用可能な状態に整える作業を指します。名寄せと組み合わせて実施されることが多く、SFAやCRMに蓄積したデータの品質を維持するために継続的に行うことが推奨されます。基本的な考え方は、データクレンジングの目的と具体例を解説した記事をご参照ください。
- 企業情報データベース
企業の名称、所在地、業種、規模、拠点などの基本情報を体系的に収録したデータベースです。営業リストの作成、名寄せの基準(マスタ)、市場規模の推定など、B2B営業の幅広い場面で活用されます。弊社が独自に収集・構築している企業情報データベース「LBC」の概要は、企業情報データベース「LBC」の概要と特長を紹介した記事にまとめています。
- インテントデータ
企業や担当者のWeb上の行動から、購買意欲や興味関心の高まりを推定するデータを指します。「どの企業が、いま何に関心を持っているか」を把握することで、アプローチのタイミングと優先順位を最適化することが可能です。概要は、インテントデータの仕組みと活用を解説した記事で詳しく取り上げています。
- 与信管理・信用調査・反社チェック
与信管理とは取引先の支払い能力を評価し、売掛金の回収不能リスクを抑えるための管理活動を指します。その一環として実施される信用調査、および反社会的勢力との関係の有無を確認する反社チェックは、新規取引の開始前に欠かせない工程とされています。それぞれの基本は、与信管理の重要性と方法を解説した記事、信用調査の基本を解説した記事、反社チェックの範囲と対処法を解説した記事をご参照ください。
おわりに
本記事のポイントを3点にまとめます。①B2B営業用語は組織・顧客・戦略・データの4領域で体系的に整理できる、②用語の定義が部門ごとにずれると連携やKPI設計、ツール活用に支障が生じる、③共通言語をそろえたうえで顧客データの整備と外部データの活用を進めることが成果に繋がる、という点です。
B2B営業の用語は、単なる知識としてではなく、部門横断で顧客に向き合うための共通言語として機能してこそ価値を持ちます。とりわけSFA・CRM・MAといったツールや、名寄せ・データクレンジング・インテントデータといったデータ関連の用語は、営業活動をデータドリブンに転換していくうえで理解が欠かせない領域と考えられます。本記事でご紹介した関連記事もあわせてご活用いただき、社内の用語理解の統一にお役立てください。
弊社の顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」は、日本最大級の企業情報データベースを搭載し、営業リストの作成から名寄せ、顧客分析までを一貫して支援します。「LBC」という独自のコード体系による顧客情報の管理に加え、独自に収集した鮮度の高い企業データや、ユーザーの興味関心を推察できるインテントデータを継続的に活用いただくことが可能です。
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